CEDEC 2016、スクウェア・エニックスに関するVRセミナー記事

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ゲームデザイナーに必用なものは「発想」「忍耐」「勇気」~堀井雄二が振り返ったドラゴンクエスト30周年【CEDEC2016】

2016年08月27日 19時00分更新

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横浜パシフィコで開催されたCEDEC2016では三日目に基調講演「ドラゴンクエストへの道 ~ドラゴンクエスト30周年を迎えて~」が開催された。

壇上には『ドラクエ』シリーズの生みの親として知られるゲームデザイナーの堀井雄二氏が登壇し、スクウェア・エニックス執行役員エグゼクティブ・プロデューサーの齊藤陽介氏を聞き手に、ゲームクリエイターとしての半生や、ドラクエシリーズの思い出話などが披露された。


▲ゲームデザイナーの堀井雄二氏



▲スクウェア・エニックス執行役員エグゼクティブ・プロデューサーの齊藤陽介氏


 

■工夫好き、いたずら好き、漫画家志望だが数学好き…堀井氏の人となり


もともと漫画家志望だったが、早稲田大学在学中にフリーライターとしてデビューし、週刊少年ジャンプの特集記事などを手がけていた堀井氏。
 
27歳の時に新聞のマイコンブームに関する記事を読んだことがきっかけで、NECのPC-6001を購入し、プログラミングにハマっていく。歴史などの暗記科目が苦手で、数学が得意だったこともあり、BASICからマシン語までをマスターしていく。

転機となったのが、1982年にエニックスが開催した伝説のゲームコンテスト「第1回ゲーム・ホビープログラムコンテスト」だ。週刊少年ジャンプで「マイコンゲーム特集」を担当していた堀井氏は、自作のテニスゲーム「ラブマッチテニス」を手直しして応募し、見事入選を果たす。

これがきっかけでエニックスからゲーム開発の仕事が舞い込み、「ポートピア連続殺人事件」を開発。そこから「ドラゴンクエスト」シリーズの開発につながっていく。

このあたりのくだりは書籍やインタビューなどであきらかになっている点も多いため、本レポートでは堀井氏の「モノ作りの原体験」や、「ゲーム作りにつながるエピソード」などに絞って紹介していこう。
 

まず堀井氏は子供の頃から「工夫好き」だったという。小学校の頃にベニヤ板を使ってスマートボールを自作。玉が入賞するとテコの原理で一度に5個の玉が出てくる仕組みも実装した。小学生の工作にしては仕掛けがずば抜けている。

学生時代には麻雀にハマった。ただ麻雀を遊ぶだけでなく、牌を裏返しに並べて、めくって出た数だけ進む双六を作ったり、トランプの「七並べ」ならぬ「牌並べ」をして遊んだりもしていたという。

パソコンを購入して作った初期のプログラムに「占い」があった。性格や行動までピタリと当てられたことに友人は「さすがコンピュータはすごい」と驚いていたという。もっとも、実は友人専用にプログラムが組まれており、答えを堀井氏が最初から打ち込んでいただけの話。このように、いたずら好きの側面もあった。

この「いたずら好き」の側面はその後も踏襲されており、「何か一つふざけたものを入れたくなる」のだという。『ドラクエ3』で職業に「遊び人」が入っているのはその好例。『ドラクエ2』で第二王子を探し回り、やっと見つけたと思ったら・・・というくだりも、そうした思いからだったという。


 

■始めと終わりを最初に決めて、中間は作りながら決めていく


この時に使用したBASICの命令は、せいぜいINPUT、PRINT、GOTO、IFといったところ。基本的な命令をくみあわせ、他は必用に応じて覚えていったという。技術を自慢するのではなく、何をすれば友人が喜ぶかを考えてプログラムしたというわけだ。「ユーザー体験」を重視する考え方が、自然に身についていたことになる。

「ユーザー体験の重要性」は、ドラクエシリーズでも受け継がれていく。ドラクエシリーズには常に、ユーザーに何を楽しませるかという「コンセプト」が決められ、そこから開発が進んでいく。『ドラクエ5』は好例で、「プレイヤーをゲームを通して本気で悩ませたい」という思いから「結婚」イベントを思いついた。そこから親子三代のストーリーへと広がっていったという。

また『ドラクエ6』ではいつもゲームが進むにつれて新しい大陸が登場していくことから、「最初から現実の大陸と幻の大陸の両方を行き来する」内容を思いついた。そして現実の世界と思っていたものが、実は・・・というどんでん返しに繋げたという。
 

話を戻すと、堀井氏いわく「『ポートピア』も描画部分でマシン語を使用したが、基本はBASICで書かれており、こういったシンプルな命令を多用して作った」とのこと。マシン語を多用して作った『ラブマッチテニス』の方がよほど大変だったとのことだ。

「重要なところから手をつける」やり方はゲーム作りでも同様で、『ポートピア』でもストーリーの最初と最後をはじめに決めて、中間部分は作りながら決めていったとのこと。あまりにも有名な犯人も「もっとも意外性のある人物」を考えたところ、自然に決まっていった。

ちなみに、この「最初と最後から作る」やり方は、後の『ドラゴンクエスト』でも踏襲される。アレフガルドのマップを作る時、最初にゴール地点となる竜王の城を中央に据えた。その上で海を挟んですぐの地点にスタート地点のラダドーム城を配置したのだ。「人間、ゴールが明確だとやる気になる」というわけだ。


 

■『ドラクエ1』から『ドラクエ10』にいたるエピソードの数々


後半では事前に参加者から集められた質問に対して、堀井氏が回答するというスタイルで進んでいった。

はじめに「戦闘の際、『ドラクエ1』では「○○が あらわれた! コマンド?」というメッセージが出ていたが、『ドラクエ2』以降は「コマンド?」がなくなっていた。これはどういう理由からか」という質問が飛びだした。

これに対して堀井氏は「言われるまで気づかなかった」と回答。それまで作っていたアドベンチャーゲームの名残で、自然と入れてしまったのではと振り返った。『ドラクエ2』からは不要だと気付いて、削除したのだという。



バランス調整の時間や人数に関する質問もあった。堀井氏は『ドラクエ4』~『ドラクエ6』のころはシナリオ作ったあと、2ヵ月くらいはずっとデータを作っていたと回答。その後もテストプレイで冒頭からプレイしてもらい、レポートを集めて、数字を調整する作業を続けていたという。

『ドラクエ6』からバランス調整やデバッグに参加したという斎藤氏は「ストーリーの要所でチェックポイントがあり、そこに到達した時のパーティ構成やキャラクターレベル、アイテム一覧などをレポートにして提出していた」と振り返った。それを堀井氏がまとめて、バランス調整に役立てていたという。

ちなみにターゲットユーザーは堀井氏自身で、UIやメッセージの表示方法、モンスターの強さなどは、自分が気持ちよく遊べるかどうかで決めているとあかした。


 

■シナリオチームが街を作るのがドラクエの伝統


『ドラクエ5』でモンスターを仲間にできるシステムは、『ドラクエ4』で戦士のライアンがホイミンを仲間にして戦うスタイルが楽しかったことから生まれた。

『ドラクエ4』は章立てになっており、第1章ではライアンのみを操作してゲームを進めていく。これでは大量の回復薬が必用になるため、パーティメンバーにホイミンを登場。これが『ドラクエ5』に継承されたのだという。

『ドラクエ10』のシナリオに関する質問もあった。堀井氏は人間以外の5種族と竜族が存在するという設定は、最初から決まっていたと答えた。

今後についても、Ver.4はここ数ヵ月でプロットの話を始めたところで、新しい職業が決まるなど、ゲームとしての骨格が見え始めたところ。Ver.5については白紙で、プレイヤーの反応を見ながら決めていくという。



マップの作り方について質問されると、はじめにフィールドマップの形を作り、その中でバランス良く街や村を配置いていくとのこと。街や村の名前、地形などは地図帳を片手に、索引や実際の地形を参考にしながら決めていく。ちなみに日本は北半球に位置するため、北に海が多い方がリアルな地形に感じられると補足された。

斎藤氏は「ドラクエではシナリオチームが街のマップも作る。マップを書いてNPCを配置し、それに対してセリフをつけながら、全体のストーリーを作り上げていく」と補足した。これは堀井氏によって『ドラクエ1』から踏襲している方法だという。

「『Critical Hit』を、なぜ「かいしんのいちげき」と名付けたのか」という質問もあった。これには「そんな気がした、会心! という爽快な感じで、語感で決めた」のだという。


 

■『ドラクエ11』では「ふっかつの呪文」も復活




最後に斎藤氏から「ゲームデザイナーとして、最も必要で大事なことは何か」という質問があった。堀井氏は「自分がおもしろがる『発想力』、それをシステム化、データ化していく『忍耐』、そして自らダメ出しをする『勇気』」という3点を上げた。

通常ライターや漫画家は編集者を相談役に作品を作っていく。優れたダメ出しができるのが名編集者だ。しかしゲーム作り、それも堀井氏ほどのポジションになると、ダメ出しできる人物がいなくなる。そこで自らダメ出しをすることが重要という言葉には、重たい響きが感じられた。

おまけとして現在開発中の『ドラゴンクエスト11』の状況もあかされた。シナリオはすでに完成していて、マップやシナリオを実装し、それらを触りながら詳細を詰めている最中だという。

開発は実装のレスポンスが早い3DSの3Dモードで行なっており、仕様が固まったら3DS版の2DモードやPS4版に反映させていく。バトルのチェックは、PS4版でも行なっているとのことだ。

『ドラクエ11』には「カジノ」と「ふっかつのじゅもん」が入るという補足もあった。特に「ふっかつのじゅもん」は「30周年らしいもの」になるという。

ゲーム産業の業態遷移と共に、CEDECの参加者も約半数がモバイルゲーム開発者になっている。20代の開発者にとって、『ドラクエ1』が発売された1986年は自分たちが生まれる前の話でもある。

年配の開発者には懐かしく、若手の開発者にはレジェンドの知見を今に伝える、貴重な機会になったといえるだろう。
 
(取材・文:ライター  小野憲史)


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