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『屋内砂浜 海の子』のディレクター本山博文氏が、子供とVRをテーマにゲームデザインの新たな方向性を語る【CEDEC 2016】

2016年08月28日 18時42分更新

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パシフィコ横浜にて開催された「Computer Entertainment Developers Conference 2016(CEDEC2016)」。そこで、『屋内砂浜 海の子』を手掛けたバンダイナムコスタジオ技術統括本部技術企画部イノベーション課ゲームデザイナー・本山博文氏による講演が行われた。

『屋内砂浜 海の子』はバンダイナムコが新しく世に提案するVRの形。2015年10月「ららぽーと海老名」でのオープンを皮切りに、今年2016年にはナムコの各アミューズメント施設において全国展開を開始。現在国内8店舗にて稼働しており、海外展開に向けての動きもある注目コンテンツだ。本講演では、子供向け大型VRコンテンツの課題と解決方法、企画開発運営に関する知見をスピーチした。
 

▲本山博文氏


 

■一年中海遊びができる『屋内砂浜 海の子』とは



「子供とバーチャルリアリティ-『屋内砂浜 海の子』による遊具とデジタル技術をミックスしたゲームデザインの新たな方向性について」と題されたこの講演。そのタイトルの通り、スライドには笑顔で元気よく遊ぶ子供たちの姿が映しだされて、和やかなムードで進む。

最初に、『屋内砂浜 海の子』とはなんぞや? というところだが、これは「サラサラの砂とリアルな映像と音で海を再現する」というものであり、主に大型ショッピングモール内に設置された屋内型施設。「屋内砂浜」が示す通り施設内にはひんやりと冷たい砂場があって、そこへプロジェクターを用いた「水辺」を再現。音響システムと相まって、あたかも南国のごとしである。

構成要素としては、浅瀬、潮だまり、大波など。浅瀬で専用の器を用いて海棲生物をすくったり、潮だまりで自分の足の動きに同調した波紋や水しぶきを楽しんだり、ジンベイザメなどの巨大な魚影を追いかけたりする事もできるという、子供が喜ぶ要素てんこ盛りのコンテンツだ。
 












「最初の一歩が冷たい砂である事」が肝だと本山氏。靴を脱ぎ、裸足で砂を踏みしめるというプリミティブ(原始的)な快感がVRの視覚・聴覚情報と相まって、「体感」へつながっていくのだ。施設にある本物の砂の感触や、目に見える小魚、そしてそれらを「実際に擬似的に動かせる」事がどれだけ楽しいか、無邪気に遊ぶ子供たちの映像からもうかがい知る事ができた。

プレイ内容、という言葉が正しいかは分からないが、挙げられた遊びの内容としては以下のものがある。さかなすくい、水の上や潮たまりでバシャバシャ、浅瀬~引き潮~大波~クジラジャンプといった海を実感できるシーン遷移等。サウンドはバンダイナムコスタジオが開発したVSSS(Virtual SoundScape System)を使用し、開発期間はなんと半年だという。それまでに蓄積した技術が結実した形であるのは疑うまでもない。

設置されている場所の多くは関東だが、特徴的なのは、北海道は札幌にある「ナムコ札幌エスタ店」。北海道の短い夏では海遊びの機会はどうしても少なくなるが、同施設を用いれば一年中海遊びができるのだ。時間的な制約はあろうが、これは子供にもお母さん方にも嬉しいポイントだろう。
 




 

■子供とバーチャルリアリティ


ここで本山氏は「子供とバーチャルリアリティ」についての知見を発表。最も大きな特徴は、「HMDを使わない」事だという。

ご存知のようにHMDには年齢制限が推奨されているため、VRを楽しめる機会は少ないし課題も多く存在する。一転「屋内砂浜 海の子」ではそれを逆手に取り、床や壁面へ画像を投影する事でVR空間を演出。HMDを必要としないVR体験を生み出した。これはイリノイ大学の「CAVE」に「Kinect2」など様々な要素を合わせたものに近い形だろうか?

HMDが不要=一人ではなく多人数での同時体験が可能で、メガネなのどの着装も不要であるため非常に気軽に楽しめるところもポイントだ。奥行き4.5m×幅6.5mというサイズであれば、20人ほどの子供が同時に遊べるという。当然親子で楽しむ事もできるため、海に行くまでの時間がとれない時、買い物に行かなくてはならない時など、親子のニーズへ対して的確にアプローチできているとも言える。

「VRコンテンツへは、現実からVRへ入る際の第一歩が重要」だと本山氏。HMD着装型コンテンツの多くは暗い空間からのスタートが第一歩であり、そこが切り替えとなる。しかし同コンテンツの最大の特徴は、VR空間への突入が、視覚聴覚情報だけではなく「靴を脱いで裸足で直接砂の感覚を楽しみながらコンテンツの中へ入る事」なのだ。

同氏は「現物の砂によってリアリティが高まる」「素足や手への食感刺激によってリアリティを大きく高める事に成功した」とも語った。例えば砂場遊びであれば、汚物やガラス片などの混入が危惧される場所もある。実際の砂浜では漂着物やゴミなどで怪我の恐れもあるだろう。そういった側面では、リアリティがあり、気軽に楽しめるコンテンツである「海の子」の存在は大きい。「安心」と「手軽さ」に優れているとも言えるだろう。

また、サウンドについても「聴覚刺激により、全身でリアリティを感じてもらう事に成功した」との事。前述のVSSSを用いた南国感溢れる波音の再現など、VR体験の確立に一役も二役もかっている。そのこだわりはサウンドスタッフからの「南国の波の音は関東の波の音とまったく違うんですよ」というコメントからも明らかだ。
 





本山氏からのまとめとしては、
 
・プロジェクターで投影された映像とサラウンドシステムによるインタラクティブな環境演出
・多人数で楽しめる
・コンテンツに入るポイントで、リアルな体験と体がリンクされて子供の遊びスイッチがONになる
・現物を使用する事や、食感・聴覚での体全身への刺激


これらの要素で、「子供向けバーチャルリアリティコンテンツは開発できます!」、との事であった。


 

■遊具×デジタル技術、ゲームデザインの新たな方向性


講演の後半では、「遊具とデジタル技術をミックスしたゲームデザインの新たな方向性」についての知見を紹介。

まず「世界共通言語」としての遊具は、CEDEC2009にて本山氏が定義した「ワールドワイドタイトル」についての考え同様に、「ゲーム=遊具は世界共通の言語であり、そこに楽しみがあれば国人種関係なく自ら進んで遊ぶ。言語や文化、生活環境は違えども、その根本は同一のものであり、原始的な楽しみはある。欧米向け商品という事ではなく、世界共通の面白さを持った商品である」という事だそう。プリミティブな、諸々の感覚に訴えかける楽しみがそこにはある。

次いで、アナログとデジタル双方の遊びについて言及。元々ナムコの人気コンテンツだった「屋内砂場」にデジタル技術を合わせたものが「屋内砂浜」であり、これが海遊びへと進化した事で「手軽に楽しめる」という部分にクローズアップ。都市生活者の抱える「不便」を解消する事が、他にはないオンリーワンなコンセプトを産んだと本山氏は語った。
 


『屋内砂浜 海の子』の企画は、雨上がりに子供が遊んでいた水溜り遊びから着想を得ている。元々はリズムアクションゲームの企画で「水溜りバチャバチャ」をメイン要素にしようとしていたところ、チェンジしたそうだ。普通のゲームコンテンツであればチュートリアルや操作説明が必要であるが、この「プリミティブな気持ちよさを持つバーチャルコンテンツ」ではチュートリアルに類するものは一切不要で、すぐ楽しむ事ができる。単純な遊びだからこそ水溜りの記憶を呼び起こし、バチャバチャと波紋を出して遊ぶ行動へとスムーズに移行するのだ。専用の器(円形のすくい皿のようなもの)を用いてのさかなすくいにおいても同じ事が言える。水面下の砂上に設定された仮想水面(30cm程度)より下でないと魚がすくえない設計をして、よりリアリティを持たせてあるとの事であった。
 
 



また、このコンテンツは「飽きる事を許容したゲームデザインにしてある」と本山氏。

特に子供は「飽き」に対してストレートで、妥協がない。それを許容するとはどういう事だろうか? 氏が言うには、「海のシーン遷移で一つの遊びを延々と遊べないようにして、子供の競争欲や収集欲を無闇に刺激しない事」にしたそうだ。「そもそも遊具は飽きるもので、子供は飽きたら次の遊具へと移動して遊び、また飽きたら次へ、といった回遊行動を行う」という。

ここに大型施設の優位性がある。巨大な空間全体をコンテンツとしてトータルに演出できるバンダイナムコだからこその部分もあるが、この発想は公園における遊具と同じものではないだろうか。ブランコで遊び、飽きたらジャングジムへ行き、次から次へと遊具も遊びも移り変わる。そういう側面で言えば、原始的な、小さな部分でも理に適っている。
 


同コンテンツでは、「南国の海遊びを徹底的に追い求め、ゲーム的な遊びはあえて緩く排除してある」らしく、さかなすくいで入手した魚の数やサイズを他の子供たちと比べたり、魚の種類をコンプリートしたりといった要素が存在しない。また、魚の種類を増やすといった事もしておらず、「海遊びとしてのリアルさ」に必要のないものは実装しない方針なのだ。しっかりとしたコンセプトがあり、何よりプレゼンス(実在感)を第一にしたゲームデザインをする事が、成功につながっている。

この項目のまとめは、
 
・世界中の誰でも楽しめるアナログな遊び・遊具とデジタル技術をミックスする
・「飽きる」を許容して子供に回遊してもらう事で持続性を持たせる
・プリミティブな気持ちよさで遊びの記憶を喚起する
・ゲーム的な要素を排除 ⇒ プレゼンスが破綻しないようにする

 
本山氏は、これらの事柄からゲームデザインの新しい方向性・ジャンルを「プレイグランド(遊び場)ゲーム」と名付け、講演を締めくくった。
 


 

■講演後の本山氏にインタビュー


――:このコンテンツを、海に行けない方などが「体験」する事は可能でしょうか?

本山氏:そうですね。車椅子の方や入院していて海に行けないお子さんにとっても、非常に楽しんでいただけるものではないでしょうか。


――:現実的に外に出られないような場合でも、例えば病室程度のサイズなどではどうでしょう。

本山氏:4.5m×6.5mが基本サイズとなりますが、あまり小さくし過ぎるとさかなすくいだけになってしまうので、その半分くらいのサイズが限界でしょうか。そこまではできると考えています。3m×3mほどあれば海に見えるかなと。
 

――:では大きいところだけではなく、今後そのようなサイズの場所からも引き合いがあれば?

本山氏:もちろんです。お話をうかがわせていただきます。


――:ありがとうございました!
 

▲本山氏(写真左)とエンジニア兼プログラマーの石井氏(写真右)


都市部の子供やショッピングモールでの子供が楽しく時間を過ごすだけではなく、車椅子の子供や海水に触れられない子供達にもプリミティブな遊びと実在感を得ながら楽しめる『屋内砂浜 海の子』。VR元年とも呼ばれるこの時代に、独自のコンセプトと普遍的な「楽しさ」をVRとミックスして提供するこのコンテンツに、今後も大きく期待したい。
 
(取材・文:ライター  平工泰久)


 
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