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【インタビュー】『サマーレッスン』はポリゴンヤンキーと2次元ネイティブの結晶 原田氏、玉置氏に聞く、BNEのバーチャルリアリティ【前編】

2017年09月13日 12時05分更新

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『サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム』、『アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション』とPlayStation VRのローンチ時に、2本のタイトルをリリースしたバンダイナムコエンターテインメント。6月1日に発売した人気格闘ゲーム『鉄拳7』においてもVRモードを搭載し、『サマーレッスン』は、アリソン・スノウ、新城ちさとという新たなキャラクターたちが登場してきた。

また2016年、お台場に登場した「VR ZONE」は約半年間で37,000人もの来場者があり、今夏より新宿にて以前の何倍もの規模の施設「VR ZONE SHINJUKU」が稼働中だ。VRについては、家庭用と専用の筐体を使ったアーケードという2軸で多いに体験者を楽しませてくれる同社だが、VRでの開発に至るまでは非常に多くの苦労があったようだ。

本稿では、バンダイナムコ エンターテインメントグローバル事業推進室 グローバルマーケティング部ゼネラルマネージャーの原田 勝弘 氏とCS事業部 第2制作宣伝部 の玉置 絢 氏にインタビューを実施。VR開発に至るまでの経緯や挫折、明らかになる世代間ギャップ、今後のバーチャルリアリティについて、包み隠す所なくお話いただいた。
 

■バーチャルリアリティからVRへの変遷とは…


株式会社バンダイナムコ エンターテインメント
グローバル事業推進室 グローバルマーケティング部
ゼネラルマネージャー
チーフプロデューサー/ゲームディレクター


原田 勝弘 氏 (写真右)

CS事業部
第2制作宣伝部 
1986年生まれ


玉置 絢 氏 (写真左)


ーー本日はよろしくお願いいたします。今更ではございますが、自己紹介をお願いいたします。

原田:僕のいる部署はグローバル事業推進室と言って、海外グループと一体となって自社IPをワールドワイドにどう広げてどう売るか、海外の現地発進で新規IPとか新しいゲームをどう立ち上げるか、といった事業を中心に行っています。また私は鉄拳シリーズのIPオーナーと呼ばれる、シリーズ全体のブランディングなども管理などもしていますね。

VR関連に関しては肩書きはありませんが、バンダイナムコエンターテインメント(以下、BNE)グループでは、1番最初にVR研究を始めたといっても過言ではないです。『サマーレッスン』というアウトプットを繋げるところを一番最初にやっており、社内的にはVRを最初に立ち上げた立場でもあります。

玉置:私の業務は『サマーレッスン』がメインですが、元々は新しいIPの企画を立てていました。ゲーム開発にいたので、作る側の発想で「どういったIPの企画を立てることができるか?」といった観点から、企画面白いものを模索していた時に生き残ったのが『サマーレッスン』で、当時の上司が原田でした。

原田:今はお互い部署が変わっています。

玉置:更に原田の上司にいたのが、VR ZONEのコヤ所長でお馴染みの小山ですね。

『サマーレッスン』は、脚本、シナリオ、キャラ設定を始め、どういうシチュエーションでやるべきかといった、どういう風にしたら刺さるのか、といった最初の技術デモなどをしていました。というか、私1人しかいなかったので、プランニングからテキスト作業まで、全部を担当していました。

『サマーレッスン』を商品化しようという時に、内容を一番詳しく知ってるので、プロデューサーとディレクターをやりなさいという話になったんです。当初はディレクションだけをやる係ではあったんですが、プロデュースするにあたって、当時VRは誰も正解がわからない状態でした。

じゃあ同じ人間が担当するのが良いだろうというところで、兼任になったという経緯です。その後、VR家庭用の分野に関してはノウハウがたまってきたので、VR関連になると各チームに呼ばれています。今、1番明確に仕事としてお話できるのは『エースコンバット7』VRモードの開発です。



ーーお二方ともBNEの中では、第一人者ということですね。
 

原田:間違いないですね。VRに目をつけて1年後に簡単なデモが出来ていたので見せたんですが、皆、僕の話と企画に乗ってこなかったんですよ。それこそ年寄りからから若い人まで(笑)。当時は誰もがVRというものがピンときてませんでした。


ーーお二人がVRに興味を持たれたきっかけはどういうところだったんでしょう。

原田:段階として2つあります。まず2011年の段階で、『鉄拳』プロジェクトや『ソウルキャリバー』シリーズでは、対戦格闘というジャンルではあるものの、一方ではキャラクタービジネスという側面を持っていて、そこではキャラクターに対しての課題があったんです。ゲームはすごく売れるのに、対してなかなかマーチャンダイズに繋がらないという。

当時フィギュアなどがなかなか売れなかったんですね。そこで原因を調べたらキャラクターが好きという事と、ゲームで使うキャラクターは乖離していることがわかりました。例えば、「僕はプレイ感覚としてはブライアンと相性が良いのでを使ってるけど、本当に好きなのは飛鳥です」というパターンが判明しました(笑)


ーーよくあるパターンですね(笑)

原田:そうなってくるとキャラクターに対する感情移入が足りないのではないか。キャラクター愛を改善しようというのが課題だったんです。そこで出た答えが、いくつかの手法だったんです。色々な映画を見ていると、感情移入させるキャラクターには何らかの飲み物や食べ物のシーンがあったんですね。

基本的に憎まれ役の悪役にはそういうシーンを入れない。でも逆に感情移入をしてもらいたい悪役には、ワインを飲むシーンとか、ちょっと何か食べるシーンを見せるというのをやっていた。

これは現実でも同じで、人間が1番仲良くなりたいときを考えると、"合コン"などがあり、コミュニケーションを最初の手段として、食事だったりお茶だったりするのが定石です。

この時に「ああ、なるほど。これをやらないとだいぶ違うんだ」ってことに気づいたんです。そこで最初に考えたのは、画面の中で恋愛ゲームのように、『鉄拳』のキャラが座ってるというモードを作る、なんて話も出ました。ただ、こんなのをやっても受けるわけないってことで、そこから話をずっと引きずったんですね。

昔の話をすると、VRの波自体はずっとあったんです。『鉄拳』も3Dのポリゴンで出てきたときにバーチャルリアリティって言ってたんですよ。今当時のチラシがあったらちょっと微笑ましいですよ。ポリゴンで表現されたものをとにかくバーチャルリアリティーって言ってる時代でしたから(笑)

そこから2011年の段階で、当時はまだOculusも発表されてなかったんですが、VRのようなものがアメリカ西海岸で研究されているといった話が出てきたり、予兆はありました。

そしてOculusの発表が2012年ぐらいだったと思います。いち早く手に入れて、『鉄拳』のキャラクターを出せるようにしようってことで、ブライアンを表示させたのが、BNEのVR第一号でした。製作にはプログラマー1人で対応して一ヶ月かかったんですけど、15分ぐらい見て"これはないな"と思いました。


ーー早かったですね(笑)

原田:『鉄拳』シリーズじゃなくて『アイドルマスター』や『テイルズ』シリーズだったり、あらゆる自社IPのゲームモデルを表示して閲覧するという実験もやっていたんですが、その時はどれもピンとこなかったんですね。なんで、僕らのVRはどういう方向にするかという研究を、一旦『鉄拳』を切り口にやっていました。

その一方で、当時、玉置が部下でした。彼はまだ20代の若手で、事業部全体で出ていた課題がアーケードのドーム筐体を使った新企画の募集だったんです。

それで玉置が、あの筐体を使ったキャラクターコミュニケーションゲームを考えていたんですが、僕が無理やり捻じ曲げて、ドーム内で女性キャラクターと会話ができる、ハイターゲットのコンテンツを作ろうって言ったんです。玉置は昔、僕のことを怖がっていたので、不本意ながら自分の企画を曲げつつ、2人で凄く真剣に考えていましたね。

そこでいよいよ企画書ができて、200人規模のホールでプレゼンをしたところ、小山が3秒で一蹴したんですよ(笑)
 

玉置:小山からその時、「これはさすがにどうかと思います」って言われたのを覚えています(笑)

原田:結局、企画は駄目になってしまったんですが、よく考えたらドームにこだわる必要ってないんじゃないかと気づきまして。丁度その時、Sony Computer Entertainment(以下、SCE。現ソニー・インタラクティブエンターテインメント) さんが、業界向けにPlayStation VRの発表をした時期だったんです。

そこでピンときて、「"あの"企画はドームじゃなくて"VR"でやるべきじゃないか?」という話しをしたんです。

玉置:その時にはSCEさんと一緒にやるんだったら企画を変えましょうって話はしました(笑)

原田:そうです、変えなきゃいけないって話になりまして、玉置の企画と鉄拳プロジェクトでのVR研究が出会ったんですね。


ーー奇しくもそこで交わったんですね

原田:そうですね。僕も交わる発想はなかったんですけど、VRを研究する部署と別の企画の部署を僕がたまたま両方見ていたので良かったなと思いました。

玉置:私は当時ペーペーで流浪の民、原田の部署は『鉄拳』や『タイムクライシス』を手がけており、毛色も違ったんです。原田の部下になるって聞いた時も、彼とは接点もなかったんです。

だから「何故、こんな怖い人の下に」と当時思っていました。過去、話をしたことといえば、「他人を説得する時はバイオレンスをちらつかせると良い」という内容で、"会議に釘バットを持っていくといいよ"っていう話を新人の時にしてもらったくらいなんです(笑)。

原田:彼は若手の企画の中でも異色の人間で有名でしたよ。今でも覚えてますけど、小山に「玉置くん、どうですかね」って明らかに扱いに困っているような言い方をされましたからね(笑)。僕はそんな異色の人材が欲しかったので「チームにください」って即答したんです。新しいことをするだったら、毛色が違う方が良いと思ったんですね。

玉置:私は中高一貫の男子校で、男だらけの荒野の中でどっぷりアニメと漫画にハマっている人生から、大学に入って同人でゲームを作って売っていたんですが、そういう生い立ちでBNEに入ってきた人は当時あまりいなかったんです。

昔からキャラクターを好きになってもらいたい。作ったキャラクターをお客様が好きだと言ってくれて、そのために色んな感情を動かしてくれるっていうことが、一番の生きがいでした。あと、普通の商業ゲームとは違うものを作りたい。表現の幅を広げたいっていう事も意識してましたね。
 

原田:業界の流れとしては、僕らは初代プレイステーションの立ち上げをした、ポリゴン第一世代です。その前の世代は、玉置のようなオタク世代が活躍していました。その当時の同人や趣味でパソコン通信をやっていて、絵も描けてっていう1つ前のオタク世代です。

僕らの世代では、どちらかというと最先端の技術などに目を向けている人が入社する時代でしたね。とにかく最先端の映像技術、ポリゴンに絵を貼るぞ業界初のテクスチャー技術採用!〇〇シェーダーを開発!もっとポリゴン描画しろ!とにかくポリゴン処理パワー!みたいな。

その後また、なので、玉置のような世代から見ると、僕の世代はもう異質な"ポリゴンヤンキー"みたいな存在なのだと思います(笑)


ーー入社してみたら、社内にポリゴンヤンキーがいると(笑)

玉置:まあ、怖いですよね(笑)最初に原田の部下になってすごい怯えていたんです。彼も私が怯えてるのに気がついてて。それを見かねたある日、エレベーターの中で原田が「俺、『大戦略』とかシミュレーションゲームとかも好きだよ」って言いまして、インドアっぽいゲームもやってるんだよっていう気遣いがありました。

原田:『プリンセスメーカー』もやってたよ(笑)

玉置私の世代は、インターネットがあったおかげでゲームが作りやすくなった最初の世代です。当時、Unreal EngineやUnityなどのゲームエンジンは個人開発ではまだメジャーではありませんでした。ただ、C+とDirectXでプログラムが作れて、シンセサイザーも安くなったことで曲の制作も楽になった。シナリオは元々やっていたので、絵以外は全部自分でやっていましたね。

原田彼は子供の頃からそういうものが揃っている世代なんですよ。僕らは社会人になってから最先端を見る世代でした。『鉄拳』プロジェクトはポリゴン世代です。常に技術の最先端に触れなければいけないので、3年から5年先の技術を見るって癖がついています。

ハードウェアがVR開発・表現に耐えうるスペックになりつつあって、もう1回VRの波、というか再定義の時代が来るだろうとは予想していたんです。そういったタイミングの中、僕らテクノロジー世代とオタク世代によってできたのが『サマーレッスン』ですね。

玉置:丁度、少し前の時期に、初音ミクのブームがあって、その時にwebカメラも浸透してきていて、カメラに映したマーカーをプログラム側で受け取ることで、キャラを自分の机の上に出せると言った試みがありました。今で言うARのようなものですね。

2008年ぐらい、現実とフィクションのキャラクターが融合がスムーズに浸透していったのが、私が大学生の時です。そういった変遷があって、その後2010年台になり、もっとライトに多くの人が遊べるように表現した方がいいのではないかということと、VRの話が同時にでてきました。

VRは一番最初は技術的なマニアの人からスタートしてますが、今では技術に詳しい人たちだけではなく、面白そうかどうかっていう視点の人達も機器を買っています。

もっとライトで、多くの人に愛されるようなキャラクターと世界観があるべきっていうことで、そこに「サマーレッスン」を作れたからこそ、上手く流行に乗れたのではないかと思います。
 

■大人たちの新しい分野への反応の無さ、だがしかし




原田:社内で最初、 VR自体のデモを見せても反応が悪くて、次にサマーレッスンを企画した時も、VRを含めて反応してくれたのは一部の若い世代だけでしたね。「やりたいです」と手を挙げたのは玉置と30代のプログラマーでした。

40代以降は、インターネットもない時代からの技術革新や変遷を見ているので、VRは刺さると思ったんですけど反応がなかったですね。

玉置:VRって体験なので、ゲームっていう枠組みだと理解できないんですね。ゲームシステムが面白いとか、連鎖が繋がってハマるかとか、エフェクトが派手とか、そういう考え方でいくとどうしても理解が出来ない。一方、僕らの世代ぐらいからだと思いますが、子供の頃にインターネットもあったし、デジタルコンテンツの中でゲームって必ずしも特殊なものというか、一番星ではなかったですね。One of them。だからあまりゲームらしさに固執しないんだと思います。

既存のゲームという枠組みでの評価にはあまり固執しない。だからVR としての体験が面白そうってなる。そう思える世代が増えてるんじゃないかなって思います。

ちょうど私と同じ世代の人って多いですよ。Mogura VR の久保田さんや、FOVEの小島さんも同じ世代らしいです。この世代でVRに関わる人が多いのは、ゲームコンテンツという枠から、あまりにもデジタルの娯楽が多くなりすぎて、飽食状態になってきた……という流れと共に大人になってきたからかもしれないですね。だからVRに魅力を感じたのかもしれません。

原田:それを象徴した出来事が2016年のJapan VR Summit の現場です。僕も登壇したんですが、昔と明らかに構図が違うのは、登壇してる側はモバイルゲームを中心とした若い会社やインディーズの規模の小さい会社ばかりで、老舗のゲームメーカーからは僕しかいなかったんです。

一方で、受講者を見ると老舗のメーカーや老舗メディアがいる。受講する側にですよ?。VR だけ明らかに気を吐いてるのが新興のゲームメーカーとメディアだったんですね。それが僕も象徴的に思いました。社内で起きた現象が、ここでそのまま起こっていると。

また、最初に壁にぶつかったのは、VRへの理解のなさではなく、ビジネススキームがなくてプレゼンをしても言葉だと伝わらないことです。VRは凄いものなので、体験すると非常に良い反応をするんですが、そこに到達するまでに凄く時間がかかる。


今まであれば、プリレンダムービーを見せて、予算を確保するということができていたんですが、VRは一回説得するのに時間がすごくかかる。これは市場でもこのまま起こるぞと思ったんですね。大勢の人に対して一斉にムーブメントを起こすような映像提供手法ができない。

VRはどう宣伝していくのか。0から1にする時の労力に、最初の乗るのはすごくリスクなんですよ。最初だからいいこともありますが、「ビジネスとしては畑ができてから。花が咲いたのを一回見て参入しても良いのではないか」と、誰でも考えることなので、最初、皆がぶつかるとこですし、今もぶつかり続けているんだと思います。
 

玉置:今もいろんな会社さんが努力しています。その当時から雛形があった「伝え方」のアイデアもあれば、さらに様々な手法を発明していったこともあり、だんだん形になってきています。例えば、現実の映像とCGを合成して、バーチャルの中に入るとこんな感じがします、という手法だとか。あとは感想の共有ですね。

感想をいっぱい書いて、体験自体は映像や言葉で伝わらないけど、誰々がすごいって言ってるっていうような反応を共感してもらえれば伝わるだろう、とプロモーションで使ったりするっていうのがVRの定石になってきています。

最近ですとVR ZONEのCMは、体験した人の反応がすごく効果的に使われていると思います。その試みは、業界内で予算をプレゼンするために、もともと四苦八苦の中で出てきたもので、今はそれがお客様に対してのアプローチにもなっているんです。


原田:僕は最初社内の200名のホールで毎月報告会をして、毎月映像を見せていたんです。「VRやってます。凄いでしょ」って。でもVRは映像で見せてもわからないです。何が一番いいかと思ったらリアクションだと思ったんです。

ただ、リアクションもずっと撮影するわけにもいかないので、言葉にしたんですね。社内でも影響力のある人が「これはすごい!!」って言ったのを、映画のCMのように、「◯◯が震撼した」「これは見るべき映画だ」とか、新聞の一面見出しみたいなノリで、パワポで文字しか見せないようにあえてしたんです。


その方が体験したいと言う人が増えましたね。今だと『サマーレッスン』って、世の中に発表した時は、社内外の予約で埋まってました。玉置なんかは、その業務しかさせなかったぐらいです。

玉置:多分、私は世界で一番PS VRを人に被せている個人だと思います(笑) 被せてきた年数が違いますから。

原田:良いデモができたので、それで「俺もVRやりたい!」って人が社内でも現れ始めた。感想を文字にした途端ちょっとずつ増えていったんです。その時に「ああ、これか」とは思いました。中身を見せるんじゃなくて、誰がリアクションしたとか、どう思ったって言うことに想像力を膨らませる方がVRのCMは効果があるんだなと。

玉置:ただ、最初に火を起こす部分は難しいですね。

原田:よく言っているのは、VRは同時多発的なプレゼンテーション手法が無いという事。例えば『ファイナルファンタジーVX』のような大作ゲームだったら、発表会 in ロサンゼルスみたいな大掛かりな形でやれてしまう。メディアを500人ぐらい呼んで、ストリーミングもして、世界で何十万人という人が同時に見ていて、「うわー、この映像はすげー」ってなる。そして数百万人に伝達され同じ映像を堪能できる。

VRはみんな一斉にHMDを装着しない限り無理で、この差はすごい大きいですね。ジャンルとか以前に、映像プレゼンテーションとしての仕組みも意味合いも規模が全然違う。

玉置:まず社内でブームを起こさないといけない。2014年9月1日、SCEさんのプレスカンファレンスで初めて世の中に『サマーレッスン』を発表した時までは、社内発表時の空気感を体験していたので、火がつかないと思っていました。

原田:そこまでVRでは挫折しかないわけです。社内でプレゼンをしては、キョトンとされて。「何かおかしいな」っていうのを続けてきたので、たぶん初発表の時もキョトンってなるだろうなと。だから、本来ゲームで表現されないようなちょっと曲がった表現までPVに入れたんです。

玉置:いろんなPVの演出をしたり、「話題を作れればそれだけでもOKとしよう」と、私物のアイドルマスターのTシャツを着て登場したりして。

原田:明らかに変なんですよ(笑)。プレゼンテーション中にやたら僕の私服であるTシャツが映るので。何でもいいから心に残る点を増やさなきゃっていうので、盛り込むだけ盛り込んだんですね。

玉置:当時、それぐらい悲観的だったんです。負け戦を覚悟していたので。

原田:そうしたら『サマーレッスン』への反響がすごかったんです。だから「ところでなんで、原田はアイマスのTシャツ着てるんだ?」って、盛り込んだ話題が余計な情報になったんですけどね。

玉置:仕掛けが逆にノイズになりました(笑) ただ、その時はやっぱりお客様の方が、その期待度というか、想像力が凄かったんだと思います。

原田:とにかく反響は若い世代からが多かったですね。エネルギーがあります。

玉置:架空の世界に行く。架空の世界のキャラクターが自分と同じ世界に存在するとかっていうのは、どんどん慣れてきてる世代だということですね。

原田:彼らは、子供の頃からそういうメディアにさらされている世代です。僕ら40代以上はテクノロジ躍進時代の世代だから意味でもっと反響があるはずだと思っていたのに、社内外でもそれほどでもなかった不思議だったんです。

なぜかというと、『ソードアートオンライン』の世界や、MMOみたいなもの、その元になったバーチャルリアリティの世界は、まさに僕らが全部その時代における変遷を見ているんです。技術も一番わかるし、ルーツがあって、どうなっていくかっていう成長を見てたはずなんですね。一番最初にあらゆる最先端ITテクノロジにファーストタッチしてるのはこの世代です。

その時にちょうどお金もあって、インターネットやPC にお金をかけることができる。世界初のMMO だとかいろんなものを体験してきてる世代なのに本来はそのバーチャルリアリティや、仮想通貨といった概念も理解している。

携帯電話というにはあまりに大きい機材の時代から、何もかも体験してきている世代が大騒ぎしてくれると思ったんですね。しかしVR が出た時に、僕らの世代よりも10代・20代が大騒ぎしたしたことの方が個人的にはすごいショックでした。社内だけかなと思ったんですか、世間的にもそうでしたね。だからVRは若い人世代に作らせた方がいいし、やらせた方がいいのかなあ?ってすごく思います。


玉置:テクノロジーだけじゃなかったんです。物の世界の捉え方、パラダイムが違ったかなと思います。

原田:それもありますね。年を取ると先に「商売になるかどうか」っていう事業のこと考えちゃう賢くなってしまっています。すると、「新しいハードのすごく楽しい未来を先に見るか、普及するまでの道のりを先に想像してリスクととらえるか」っていう分岐が出てくるんです。

一般論・業界全体の話としてなんですが、僕が入社した時は、ゲーム会社で上場企業というのは数少なく、上場していない会社がほとんどでした。明日一番になるために博打やチャレンジをしなければいけない。いろんな博打やチャレンジをして残った結果が今のゲーム業界です。

昨今は自然淘汰もされてるし、一大事業として昔に比べるとある意味安定してしまった。僕の世代が忘れてしまったのは、「わくわくする」「凄い」と思ったものをどういうアウトプットに変えていくのか?という考え方なのかもしれない。業界全体の収益手段が安定した時、事業や商売の話が先に出てしまいがちになるんですね。

自戒を込めて言っていますが、ゲーム業界が大きくなったが故に、そういう変化が起きたんだろうなと思いました。それはVRに携わることで凄く実感しました。僕らはその忘れていたものを取り返すか、若い世代に託すかの二択だなっていうのはすごく感じましたね。

玉置:若い世代はもう、波に乗って行くのが当たり前なんですね。「現実とフィクションが一緒になったら、どうなってしまうんだろう」みたいな、子供の時から色んな作品でトレンドだったものを見てきて、これで夢みたいな世界ができるのかもと感じてもらえる。だから『サマーレッスン』に限らず、現実とフィクションをミクスチャーしたようなコンテンツが今後も盛り上がっていくんじゃないかなって思います。

 

<9月14日公開の後編に続く>

(編集・取材:ドラゴン・リバー)
(取材・文・撮影 : 編集部 和田和也)
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